算数は電卓で調べたらええだけ、なのか
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不登校youtuberの小学生の以下の画像をtwitterで見て、意外と考え応えのある問題ではと思い素人なりに考察をしてみようと思う。
こちらの元ネタを確認しようと彼の動画をいくつか見たが、彼自身、勉強の重要性は否定していない。固定的なカリキュラムに対して反発をしているようだ。
今回考える課題は以下の2つだ。
1.技術が急激に変化する中で何を勉強することが有効か
2.逆張りと順張りのタイミング
技術が急激に変化する中で何を勉強することが有効か
「算数は電卓で調べたらええだけ」これは真実である。
技術を使いこなすことで競争力が増す
例えば複雑な演算をする際に手計算で解こうとする研究者やビジネスマンがいたなら何故MatlabやExcelを使わないのかと指摘される。人間よりも遥かに効率的に問題を解決する手段があるのにも関わらずそれを使いこなす能力を有しないことは競争力を大きく低下される。
それどころか、技術を有効に使いこなすことは決定的な競争力でもある。
ノーベル賞を獲得した小柴先生(*大規模工事を推進したことから小柴親分とも呼ばれる)の成果は浜松ホトニクスが作る光電子倍増管を使いかつてでは考えられなかった超大型装置を用い観測が困難であったニュートリノを検出したことだ。
生物学でも画像解析、三次元追跡、GPSという工学的成果が応用され成果につながっている事例も多い。
物理学・生物学に限定せずであるが近年のブレイクスルーは計算機に代表される技術を使いこなすことによって実現されたものが多い。
少年が言及する電卓の使い方を知っていることは重要な要素である。
ただ電卓を使えることでは成果を目指す上で十分ではない、というのが彼に対する批判の多くではないだろうか。それでは何が他に必要なのか。
電卓は課題を定義しない
研究にはテーマとアプローチが存在する。
例えば小柴先生の例ではテーマをニュートリノの観測、アプローチが光電子倍管による観測だとする。
それでは「ニュートリノの観測を行おう」という課題設定は演算装置が小柴先生に指示をしたのだろうか。残念ながら機械学習系アルゴリズムの急激な発展が起きた2019年現在においても課題設定(理学的な追求テーマの具体化)というオープンエンドな質問は計算的に解くことは困難なテーマの1つである。
画像の中から「猫」と考えられるものを分類する問題とは異なる種類の問題だ。
それではニュートリノの観測を行おう、と考えるためには何が必要なのか(ちなみに私は素粒子については素人なので厳密な議論はご容赦頂きたい)。
ニュートリノ観測は人類にとって重要なテーマであり、それは十分解決可能である、という発想を持っている必要がある。
テーマ特定を行うには科学史に限らず、科学が社会に与えた影響を知るために科学以外の知識も持っている必要がある、さらに課題が十分に解決可能であるという発想に行き着くために取りうるアプローチを頭の中に大量に持っている必要がある。
頭の中で課題が解きうるかを知るためには頭の中で概算を高速にする能力も重要だ。
研究以外でもビジネスで「どのような事業に取り組むべきか」を定める問題には知識並びに自分が持っている知識群を高速に組み合わせる能力が必要だ。
残念ながらこのオープンエンドな質問を計算的に解くアプローチは現在未成熟だ。
ちなみに少年が「youtuberになろう」と意思決定をしたことも当然計算機による要請ではないだろう。
テーマ・アプローチというように少年の発言や小柴先生の研究を分解すれば
小柴先生:
テーマ:ニュートリノの観測は
アプローチ:光電子増倍管使ったらええだけやろ
少年:
テーマ:算数(四則演算)は
アプローチ:電卓使ったらええだけやろ
少年が自身の主張を支える具体例としてテーマを四則演算、アプローチを電卓としか表現出来ないのはテーマの設定能力も使いこなせるアプローチ数も幼稚であることを証明してしまっている。
少年が電卓を使えることも教育の恩恵
少年は何故、電卓の能力であるアラビア数字と四則演算を知っているのであろうか。
歴史を見れば明らかであるが、数字・四則演算の概念は人類にとって自明ではなく、発見までに長い時間を要している。
発展すればより高度な計算装置の使い方(機械学習、探査アルゴリズム、CPU・GPU、TPU(笑)...)を習得することが可能であろう。
少年が現在持つ知識では電卓という原始的な装置だけでなくより高度な計算装置を使い競争力を増すことが出来る。
簡単なまとめ
極めて冗長な文章になってしまったが私が感じたことは以下の通りである。
・技術を使いこなすことは競争力を決定する上で重要だ
・オープンエンドな質問を答えるには計算機を使えるだけでは不足であり、オープンエンド質問の一つである課題設定は競争力を決定する上で極めて重要だ
・少年が電卓を使えることも教育の恩恵であり、勉強を続けることでより高度な計算装置や技術を習得出来るだろう
それではオープンエンドの課題解決には何が必要か、というテーマを考えはまだまとまっていないので機会があれば別の日に考えてみようと思う。
逆張りと順張りのタイミング
ベンチャービジネスに携わる者は常に逆張りを狙うことで高いリターンを得ようとする。「誰でも見えている真実」に投資するだけでは「並」のリターンしか得ることが出来ない。
逆にベンチャービジネスはハイリスクであり、多くの人にとっては「実存が極めて疑わしい真実」に自らの資金と時間を投資し「並」を遥かにオーバーパフォームするリターンを追求するものである。
例えば米国債に投資しても年利2-3%(3年運用しても10%に満たない)しか得られないがベンチャービジネスを成功させれば自らが投下した1,000万円が3年の間に数億と2,000%以上にもなるリターンを期待出来る。
ただ常に全ポートフォリオをハイリスクプロジェクトに投資をすることは合理的ではない。ここぞ、というタイミングで自分が制御可能な範囲でハイリスクプロジェクトに時間・資金を投資するべきだと私は考えている。
少年の例で言えば小学校に行かず高いリターンを得ようというのは多数派に対して逆張りであり、確かにときに高いリターンを期待出来るがベンチャービジネスの多くのものは失敗に終わる。普通に学校に行ってそれなりに勉強をするという「並」以下のリターンに終わる場合が多い。
また少年が制御可能な範囲にいるか否かというのも判断の1つのポイントである。実名と顔をWEB上に公開し意見を述べ不登校をするというのは少なくとも少年1人で制御出来る範囲を超えているのではないかと考えられる。
もちろん少年が逆張りで大成功する確率も存在するのではあるが、少年には自らの意思で「ここぞ」という時に逆張りでの成功を得て欲しいと感じてしまう。
全体的な印象
少年のyoutubeを見ていると10歳と思えぬ程明確な論調であり、本人は決して勉強を馬鹿にしておらず、それどころか重要性を認め「好きなタイミングでしたらよい」と語っている。
今後、電卓のみならず高度な演算を使いこなし、現在置かれた特殊な立場を活かし活躍して欲しいと願う。