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基礎研究を批判する人は世界の拡大を妨げている

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こんにちは、シャイニング丸の内です。

大隈先生、ノーベル賞受賞おめでとございます。基礎研究が話題になるといつも起こる議論である「基礎研究は約に立つのか」について今回は考えてみようと思います。

主張としては「未知の領域の原理を研究する基礎研究はほぼ評価不能だから素人は文句言わず陰ながら応援しろ」です。

工学的な研究と理学的な研究の違い

工学的な研究は役に立つ製品を作るための研究であり、こちらは非常にわかりやすいです。短期的(3-5年)な収益を上げることができそうな場合は民間が取り組み中期的(5-15年)な収益につながりそうな場合は大学機関などが研究を行います。

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「工学的な研究」のイメージを図で表すと上の図のようになります*1。工学は新たな原理の発見を目指すのではなく既知の原理を用い製品を作り出すことを目的とします。既知の原理を使うので出てくるアウトプット(「役に立つかもしれないもの」=リターン)も予測しやすいですね。

これはビジネスの考えと同じで「これらの原理に基づくと●円を使って年研究すればな成果が%の確率で出るであろう。これは初期のリターンより大きいからこの研究やらせてね」という投資・リターンという考えで捉えることが出来るので社内でも世論でも説得はしやすいわけです。

これが理学的な研究となるとそもそもが研究のモチベーション、求めるものすべてが異なります。

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理学的な研究を図示すると上の図のように捉えることが出来ます。工学とは全く異なり、特に具体的な製品などは期待するようなものではありません。そりゃそうです、「もしかしたらあるかもしれない世界」の原理を探求して何か出るかなんてわかりません、こちらの研究は「おそらく私たちが知らない世界を動かしている原理がある、それってなんだろうね」というモチベーションにより動かされます。

工学での評価はそのアウトプットは何の役に立つのか、要は経済的なリターンは何かでよいのですが、理学の成果=原理の評価は「人類が未知の世界についてどの程度解明したか」でなされるべきではないでしょうか。

原理を解明してどうする

ここでは原理の解明は高等な趣味なので口出すなということを言っているのではありません。現時点でその価値を測定しようとしても出来ないということが主張したいことです。

例えばニュートン万有引力の法則を発見し重力を定式化した時点でその辺の凡人が「ニュートンさん!すごいねこれは!これによって第一宇宙速度を算出出来て、その運動力を与えれるような何かしらが発明されると思うからそうしたら宇宙に我々は様々なものを打ち上げることが出来るんだ!重力と遠心力が釣り合うポイントであれば長く一定の高度を保つことが出来て人工衛星というものが出来る!無線通信も発達するから地球規模で通信も可能にしてGPSもできるから自分の地球上での座標も計算できる!すごいねこれは!」

とか、400年前に不可能です。

レーウェンフックが微生物見たから何なのか、ガリレオが振子の周期はおもりの重さによらないと発見したから何なのか。未知の世界の発見というのはその時点では経済的なリターンを予想するなど不可能ですが発見されていなかったら我々の周りの世界もかなり違いますね。偉大な科学の発見は結果的に数百年スパンで人類の生活を変えているものが多数存在します。

それは発見時点でリターンが予測不能だからといって否定されるようなものではありません。

研究者はなぜ研究するのか我々凡人はどう向き合うべきか

それでは研究者はなぜ研究しているのでしょうか。多くの場合それが実際に世の中に役に立っている時点では死んでます。特に感謝もされません、死後に銅像は建つかもしれませんが。では人類に貢献したい?あまりそれも思っていないようです。

彼らに話を聞くと多くの研究者は「面白いから」という答えに収斂する場合が多いです。「一応予算通すためにこの研究の意義とか書くけど、実際のモチベーションは違うよね、面白いからやってるよ」というのが私の周囲の研究者で多かった意見でした。

我々凡人としては外部からガヤガヤ口出すのではなく「おそらくは存命中は称えられないし、経済的に非常に豊かになるわけでもないのに未知の世界を探求することに並々ならぬ情熱を持っている人ら」というのを陰ながら応援すべきものではないでしょうか。

 

*1:マクスウェルの方程式、シュレディンガー方程式はあくまで例