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コンサルティングは虚業なのか

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先日、以下のような記事を見た。

結局の所、博士課程院生(文系)の民間企業就職って、そんなにいいも

アカデミアもしくはアカデミアに適したマインドを持った人は多くの場合、「結論ありきでデータを編集する仕事」とコンサルティングやシンクタンクの業務を捉えて矛盾を抱える。

改めて書いてみると「シンクタンク」とは誤解を与えやすい言葉だ。

まるで叡智を結集させた組織が政治を裏側で動かしているような印象を与える。

実際にはそのように感じられる業務はごく一部であり、上に挙げたブログの筆者のように見栄えのよい資料作成代行と感じられる業務が多いだろう。

上の記事だけ見ると、コンサルティングやシンクタンクはどれほど知的に退屈で、卑しい業務なのかという印象を受ける人も多いだろう。

しかし、逆に私はコンサルティングという仕事を知的にも、生活にドラマをもたらす要素としても面白い仕事だと考えており、また社会的な価値も高い仕事だとも考えている。

今回の記事は何故コンサルティングの実務について捉え方の相違が生じるのか、知的好奇心を持っている人には実際向いていない業務なのか、価値が低く卑しい「虚業」なのか、について考察をしてみた。

何故ブログ筆者はコンサルティングを虚業だと感じたのか

筆者がコンサルティングを虚業と感じた理由は2つに集約されていると思う。

1.就職した会社自体の顧客もチームも端的に言えば「悪い」

2.筆者がビジネスで価値を発揮することに面白みを見出さない

1.就職した会社自体の顧客も同僚が端的に言えば「悪い」

 筆者の実務を知ることは出来ないので推論でしかないが、勤務していた会社は業界下位もしくは引用した言葉を使うなら「クソみたいな」仕事しかアサインされないチームではなかったのだろうか。

ここでは顧客とチーム両方に「悪い」と書いたが、意味は異なる。

コンサルティングに取って悪い客とは

まずコンサルティングの顧客として「悪い」とは金払いも悪く、調査や分析内容も知的な作業を要求せず、提案内容によって実際に動きを取らない客だ。全てではないが、これらに全てに当てはまる場合が多いのが記事中で挙げられていた「地方自治体」だ。

この客を相手にした業務で、特にアカデミアに適したマインドを持っている人間がやりがいを見出すのは難しいであろう。よいことと言えば相手も厳しいプロフェッショナリズムの世界で教育された人間ではないため予算も限られているがアウトプットに対する要求も甘い基準を持っていることだろう。

それを示すように、記事中にはハードワークに関する記述は登場しない。

また、地方自治体を主要顧客とする場合は総合商社や製薬会社を主要顧客とした場合と比較し、受注単価は格段に低い。必然的に給与も低く苦痛に耐えるインセンティブは発生しづらい。

地方自治体の結論がほぼ決まっているような資料作成代行業務など、これよりも低い単価があろうかというほど低いのではないだろうか。給与水準もコンサルティング業界において最底辺に近いことが想定される。

ちなみに、コンサルタントは賢いため自分が働く理由を上品に表現することに長けている。決して「業務内容は面白みが少ないが、競争心を刺激される環境であり、福利厚生も良くパートナーになれば数千万の収入を目指せる」とは答えない。かなり上品な表現を常に言うことが出来る人が多い。

このように「耐えるインセンティブ」を感じることが出来ない労働環境であったことも元の筆者が退職した一因ではないだろうか。どうやらアカデミアに戻ったらしいのだが、これが年収1,000-1,8000万円からアカデミアの人文系の生活に戻るのは業務にさしたる面白みを感じずとも判断を難しくするものだ。

さらに、端的に言ってしまえばコンサルティング業界においては高単価の仕事のほうが知的な面白みを増す傾向がある。高単価ということ一部の限られた才覚を持った人間にしか出来ないため高単価ということがよくある。筆者は知的に面白い高単価の仕事に巡り合う機会を持っていなかった、そうすると安い給与の面白みが少ない仕事しか待っていない、2重に辞めるインセンティブが働く。

このように深刻な意思決定ではなく、資料作成業務という「虚業」「低付加価値業務」についたため、満足度が低かったのであろう。

チーム自体が悪い

地方自治体の調査案件は極端に詰まらなそうであるが、例えばSEOを例に取ってみよう。

「顧客のWEBサイトのgoogleからの評価を改善し順位を上げる」

これだけを見るとかなり詰まらないと感じる人は多いのではないだろうか。しかし、私はこの業務を嬉々として取り組んでいる人を多く知っており、そのスキルを極め業界の有名人になる人もいる。

このスキルを拡張し、自分がメディアを立ち上げ自身が事業家として大きな売上を上げ「起業家」となるケースさえもある。何らかの業務にアサインをされたとしてもその人間やチームのマインドによって成果は全く異なるものとなる。

イソップ物語に登場する「3人のレンガ職人」の例を挙げるまでもなく似た仕事でも本人のマインドによって捉え方や成果は全く異なるものになるのだ。

注「3人のレンガ職人」:レンガを積み上げている3人に何をしているのか、と聞くと「レンガを積み上げている」「壁を作っている」「大聖堂を作っている」と答えが異なり、仕事に対するモチベーションも異なるものであったという例。

このように視座を上げるチームや上司がいなかったことが文章(「アホなクライアントと上司」)からは伺える。

最も視座が高い場合はコンサルティングビジネスの上流を目指すため新興企業でも無い限り地方自治体の低単価案件などしないものだ。

この視座のなさも、コンサルティングを低付加価値の虚業と考えてしまう一因だったのではないだろうか。

2.筆者がビジネスで価値を発揮することに面白みを見出さない

コンサルティングはビジネスであり、言うまでもなくその目的とは収益の最大化だ。

これに貢献するものが実業であり、貢献しないなら虚業だ。

コンサルティング市場は国内においても数千億ある言うまでもない実業だ。虚業ではない。虚業ではこの市場規模までに成長しない。

 

収益の最大化には高単価・大規模・長期プロジェクトが必要であり、1人のジュニアコンサルタントがそのために貢献出来ることとしては顧客に大きな価値をもたらすことだ。

「顧客への価値(インパクトとも表現される)」を重視するなら「アカデミックに正しいようなデータ分析」など殆ど価値を持たない。

顧客への価値とは顧客が組織として提案に納得しその提案によって結果として儲ける(コストが減る、売上が上がる...)ということだ。そこにおいて「俺が思うアカデミックに正しいデータ分析」は必要とされていない。

必要とされているのは実行価値がある提案とそれを納得させ組織を動かす力だ。

組織を動かす力として「綺麗なパワーポイント」「ロジック」「定量分析」が有効な道具であるため使っているに過ぎない。これに対して「俺が思うアカデミックに正しいデータ分析」に価値があると考えいる場合は顧客にインパクトをもたらすコンサルタントのマインドからは程遠いだろう。

筆者が指摘する通り、コンサルティング業界で求められているマインド・スキルセットとアカデミアで求められているマインド・スキルセットは大きく異なる。大げさに言えば別物と考えてもよいほどだ。

雑考:アカデミアにおいてもインパクトを目的としたマインドは必要なのではないか

活躍する研究者とは何だろうか。これを山中教授のように讃えられ、賞を受ける研究者とするなら、その賞は一応、賞を授ける組織の背後にある組織(国、コミュニティなど)に対する貢献に対して贈られるものだろう。

先程はミクロなサイズでクライアントにインパクトをもたらすことが仕事であったものの対象と手法が変わっただけである。

このように考えると知的好奇心の追求は推進力として当然必要ではあるものの「役に立たない研究しかしないけどね」と語る研究者が大きなインパクトをもたらす可能性は、「役に立つ研究をしたい」と考える研究者がインパクトをもたらす可能性と比較すると極端に低いものではないだろうか。

実際に「役に立つ研究」はヒット率が高くないため狙えば出来るというものではないが、闇雲に振るバットよりも遥かにマシな確率であろう。

 

外資コンサルのプレゼンは「虚業」なのか

筆者の指摘の通り、「プレゼン術を名乗る本」の多くはまやかしというかあまりよいコンサルタントが書いた本ではないのだが、外資コンサルの資料はまやかしではない。少なくともまやかしの資料で数千万~数億のフィーを受け取り続けられるほどクライアントは自身の金に無頓着ではないことは明らかだ。虚業、虚構ではこれは不可能なのだ。

それでは「虚業」と筆者が感じたのは何だったのだろうか。おそらくデータの編集の仕方であろう。データというのは単体では意味をなさない。解釈があり初めて意味をなすものである。

空が暗いはデータであり、意味はない。空が暗い、統計的に雨が降る確率が高い、傘を持て、という解釈から提案があり、初めて「意味」をなすものになる。

我々の目に入るものもデータとしては無数の電磁波でしかない。何故文字に見えるかというのを考えてみると思考としては面白いだろう。

編集のないデータというのは存在しない。同じデータであってもどのように表示するかで印象は大きく異なることは明らかだ。

恣意性は是だ

単純な例として以下の例を見てみよう。

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この図を見ると「急というほどではない?」という印象を受ける人が多いのではないだろうか。これを横方向に圧縮してみるとどうだろうか。

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急成長と見えるのではないだろうか。当然中身の数字は変わっていないのだが横方向に圧縮すれば勾配が増すため急成長という印象を与える事ができる。

印象に大きな影響を与える「横幅 」はどのように選ぶべきか。ランダムに決めるべきなのか。そうではない、インパクトを与えるという観点で考えれば中心となるストーリーが主張しやすいように見せ方を工夫するべきだ。

これは単純な例だが他にもグラフの並べ方やサンプリング頻度(何故四半期ではなく年単位で数字を取ったのかにも意味がある) 、同じデータを使おうと表現によって印象は大きく変わる。こういったものを「まやかし」と感じたのだろうか。

ただ繰り返すがコンサルタントの役割はグラフの見せ方にランダムネスを確保することではなくインパクトをもたらすことだ。表現が恣意的であることはむしろ是である。

アカデミックに正しい分析にはビジネスで意味がない

筆者は「最初から結論が決まっているので、データ分析はいかに結論をでっち上げるか」であったと語っている。これは筆者が受けていたプロジェクトが低単価であるためそのような雑務案件をこなしていたと推定される。繰り返しにはなるが、結論が決まっているもののデータ分析のように価値が低いものに高額なフィーを払い続けるほどクライアントは自身の金に無頓着ではないからだ。

確かに多くのプロジェクトには突飛な発想は求められておらず「冷静に考えればそれはそうだ」というプロジェクトは多いのが事実ではあるが、中身が十分に具体化されていないため反対派を押しきれず結果進めないという案件は多い。これを「結論が決まっている」と一括りに表現することは間違いであろう。さらに言えば高額なプロジェクトであればあるほど、高度な洞察が求められる場合は多い。

さて、見出しのテーマについて考えてみよう。

アカデミックに正しい、とは手に入るデータをありのまま受け取り論理的に導出された結論ということだ。

ビジネスの結果を恐ろしく単純化したモデルで以下の2要素のかけ合わせと考えよう。

施策内容 x実行能力

コンサルタントの提案なるものが「施策内容」になるとしよう。その施策に基づいて推進する能力が実行能力、つまり内部の人がどれほどの情熱と力を持って進められるかだ。

ビジネスの実行フェーズとなると、どのような「(コンサルタントが唱える)アカデミックに正しい結論」というのはチームに十分な推進力を与える要素とはなりづらい。

リーダーが唱え、チームが心から熱狂出来る道こそビジネスにおいて意味のある施策内容であり、実行能力を決めるものなのだ。

コンサルタントに対する批判としてよくあるものが「分厚いレポートだけ置いて去っていった」である。これは分析として正しくとも、チームメンバーの頭の中に根付かず、実行の役に立つには程遠いアウトプットであったということだ。

筆者が提出したアウトプットを見ることは出来ないが、「結論のでっち上げ」についてはそのアウトプットを使って実行に移すチームの力となったか否かを考えてみるとよいだろう。

さらに言えば、実行の現場において事前調査で得られたデータから論理的に導出された施策が「正しい」保証など全くない。対象とする施策内容によるが、細かく語ればほどんと間違っているが実際の姿である。

極端な例としてはベンチャーに対して2年前にコンサルタントが丁寧に分析した資料など何の役に立つだろう。地方自治体の施策はベンチャーほど動きは早くないが「正しい分析」に価値を置きすぎることは誤りであると考えている。

コンサルタントにはインパクトをもたらすという思考が欠かせない

集約するならば筆者はインパクトをもたらすことに興味がなかったのではないだろうか。データを論理なるものに基づいて分析し「役に立たないことしかしない」ならば私はどのような職業がこの世にあるのか分からない。

最後になったが今回の考察の目的は匿名の筆者を批判することではない。コンサルティングやシンクタンクは虚業というものに対する誤解を解く機会を提供することにある。

考察機会を与えてくれた筆者には感謝したい。

インパクトをもたらすマインドについては以下の記事にも書いた、是非参照してみて欲しい。

コンサルタントに向いている人とはどのような人か

またコンサルティング業界に興味が持てた人に対しては具体的な方法を以下の記事で解説している。

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