コンサルタントに転職する前に読みたいプレゼン・スライド資料
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コンサルティング会社の目的は「会社や組織を動かすこと」ですが、最終成果物として納品するのは殆どの場合、パワポのプレゼン資料です。
エクセル、インタビュー、イシューアナリシス、様々なスキルやワークは全て最終報告書に凝縮されていきます。コンサルタントへの転職を希望される皆様へ向け、アウトプットのプレゼンを見ることでコンサルタントとして働くことはどういうことかを想像することを今回のゴールにしてみようと思います。
皆さんが転職に成功し、コンサルタントとして働くようになると、これらに含まれる図、ページ、拡大すると一章と作っていくことになります。
公開されている資料は民間向けのものは機密性が高いためほぼなく、政府向けのリサーチプロジェクトが主となっております。
注意点としては政府系の案件は比較的安価かつ抽象的でファームの全力でないという場合もあり、また公開されているのも一部である可能性もあります。東北系などはプロボノ(無料)の場合もあります。さらに「最終報告書」ではなく、後に登場するマッキンゼーの資料のように「討議用」と書かれているものは中間ドキュメントであり、ミーティング用のディスカッション資料です。
民間向けのプロジェクトではもっと生々しいデータ(売却すべき部署ど削減出来るコストなど)が盛り込まれたプレゼンに仕上がります。
これが全てではなく、あくまで転職前の参考にという程度に留めておきましょう。それでは実際に公開されている資料を見ていきましょう。
公開されているコンサルティングファームの資料
ボストンコンサルティンググループ
経済産業省 平成28年度産業経済研究委託事業
「日本の中長期ビジョンの検討に関する調査」
①富の創造と分配 最終報告書
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000280.pdf
431ページの渾身の資料です笑。随所に苦労が伺えますが、まず最初のページ。
未経験でコンサルタントに転職前の方には想像が付きづらいかも知れませんが、おそらくクライアントである経済産業省から「このような前提で進めて欲しい」という抽象的な注文があり、それをマネージャー・パートナー陣が進め方を握ったものではないでしょうか。
プレゼン資料とは活きた議事録とも解釈出来ます。単純にわかりやすく初見の人に伝えるだけでなく「こういう前提でやってますよね?」と進めないと後からひっくり返されるときに危ないのです。
上位職種となるとクライアントのニーズについても敏感に感じ取り、資料化をしなければなりません。
これは進め方ですね。プロジェクトの提案段階で大体作ります。
いつまでに何をやるかを明確にすることでプロジェクトを受注しやすくなりますし、クライアントからの執拗な「あれいつまでに出来るのですか?」を回避出来ます。
ここはITの開発プロジェクトとも通じるノウハウですね。
チームへの過剰負担を避ける役割もあります。このスケジュールが前倒しで達成出来ればチーム(アナリスト・コンサルタント)にはややゆっくり働いていてもらって構いません。
パートナー・マネージャーは上位職種と言えど、実務担当であるアナリスト・コンサルタントにそっぽを向かれては機能しません。もしくは優秀なコンサルタントをアサインするのには大変苦労します。
コンサルタントに転職する場合は未経験ですと基本的にジュニア(マネージャー未満のアソシエイト・コンサルタント・アナリスト)として転職することになりますが、早めに上位職種の業務を把握しておいたほうがよいでしょう。
一定程度支持されないとやっていけない職種なのです。
この赤で囲った部分は「ブランク」もしくは「スケルトン」などと呼ばれます。
「中身はまだ分からんが、フレームワークとしてはこのような切り口で考える」というものです。これは特にマネージャーの腕の見せ所ですね。
コンサルタント初級ではマネージャーが切ったフレームの中身を埋め、インサイトを一部出すというのが最初の仕事となります。段々と慣れてくると以下のように自分の動き方が変わっていきます。実は早い人なら3年もかからないです。未経験から転職して、1年目でも出来る人は出来ます。
・ストーリーに沿ったインサイトの出し方を自分で考える(〇〇市場が伸びていると言うべきでそのデータはここを見ればある、見せ方はこうする)
・スチーリーを自分で書く(最終的にクライアントを説得するにはまず市場が魅力的であると思ってもらう必要があるので対象地域の市場規模、成長率、ドライバー、競合とセグメンテーションを調べて1ヶ月後に見せよう)
・クライアントとのコミュニケーションプランを自分で設計(このタイミングでこれを見せて、次はあの課長にこれで説得して、社長に根回ししてもらって...)
・プロジェクト以外のディスカッションにも対応
どうすればクライアントを納得させられるのか?
上のようなスケジュールも自分で作り、こなしていく必要があります。
この日数とアウトプットとしてある資料、そして裏側にある参考資料を見るとコンサルタントの仕事量が想像出来るのではないでしょうか。
こちらの資料P16から膨大なキーアウトプットが始まり300P以降が参考資料的なスライドですね。実際に作っているスライドの数としては最終報告書に含められていない参考資料(アペンディクス)もありますのでその量の多さが伺い知れます。
1つ1つコメントすると切がありませんが、上のような資料を考えなしで作ると「新しいていつから?中てどの程度を「中」ていうの?何故上位100位ではなく10位までなの?」と聞かれます。
そのときに「なんとなく」というような回答をしようなら将来暗いです。
分からないなりにも一定のロジックが常に必要です。
コンサルタントの苦労がにじみ出る資料でした。
マクロ分析的な資料として純粋に面白いので別の見方でも読んでみて下さい。
受動的に読むだけでなく「自分だったらこう進める」「こう見せたほうがよい」というように主体的に考えてみるとよいでしょう。この進め方が絶対唯一の正解というわけではなくコンサルティングはチームによって全く違うアウトプットが出ます。
ちなみにこちらはボストンコンサルティンググループの別の資料です。
情報通信審議会 情報通信政策部会
第2回 新事業創出戦略委員会
http://www.soumu.go.jp/main_content/000103705.pdf
中にはこのような図もあります。コンサル未経験の方は「これ自分で作るの...」と思ったかも知れませんが安心して下さい。このような細かい図を作るチームは専門にございます。転職後にファームが持つ様々な効率化の仕組みに驚くかと思います。
ただキャパシティが埋まっていたり緊急対応が必要なことはよくあることなので自分で作ることも珍しくはありません。
ファームにはコンサルタントの生産性を向上させるための仕組みが充実しています!
BCGについて詳しく知りたい方はこちらを御覧ください。
ボストンコンサルティンググループ(BCG)に転職するために知っておくべきこと
マッキンゼー・アンド・カンパニー
さて、コンサルティング業界の雄、マッキンゼーです。
我が国製油所の国際競争力
討議用資料
2014年2月25日
http://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/sekiyu_gas/pdf/001_04_00.pdf
「討議用資料」ですのでやや作りが雑ですね笑。これは最終報告ではないので仕方ないことです。
おそらくプロジェクト初期でしょうか、「なんとなく知っているファクトを綺麗に可視化し全員の認識を揃える」ようなプレゼンテーションパックに見えます。
個別のインサイトを出すプロジェクトであればこれは前座であり、ここから本編が始まるというものになります。このくらいだとクライアントからフィーを頂けません。
オイル&ガスはデータベースが豊富に存在し、専門家も多いためデータを集めるという観点では比較的容易です。製薬や一部ハイテクなどもそうですね。
諸外国における介護人材確保の動向確保に向けて
第二回 福祉人材確保検討会
2014年6月20日
先程にまさるざっくり資料です。アウトプットではなく、パートナーが検討会におおいて序盤に話すための資料でしょうか(実際に作成にあたるのはアナリスト・アソシエイトです)。
プロジェクトにアサインされない状態で暇しているとこういったお手伝いプロジェクトにアサインされます。ちなみにコンサルタントとしての評価が上がるわけではないので個人的にこれをいくら頑張ってもキャリアとしては意味合いが薄い気がします。
こちらの資料はご参考程度です。
マッキンゼーも政府系プロジェクトはないわけではもちろんありませんが、最終報告書の日本語版はWEB上では見当たりませんでした。他ファームと比較しフィーが高く政府系の案件が受けづらいという影響もあるのでしょうか。
マッキンゼーの資料について解説
少しマッキンゼー資料の中身について解説します。転職志望者の方は特にじっくり読んで下さい。
2ページ目からデータリッチですね。作るのが大変そうに見えるのですが、実はこのチャートはとても簡単です。赤で囲んだ部分にMckinsey refinery capacity databaseとあります。このデータベースを見れば数字は存在するのでそれをThnink cellという綺麗なグラフを作ってくれるツールに貼り付けるだけです。
最後に末尾の生産量が少ない会社から日系企業以外を削除し、濃い青で目立たせて完成。ファクトリッチで、やっている風に見えながら作りやすい資料です。
さて、こちらのチャートは右上に注目しましょう。
「推計」「ベースケース」などと書いてあります。一応、ここは本資料に対する注釈的な役割ですがもっとも使われるのは「初期的」という注釈です笑。
とりあえず、やってみたから後から変更になったり、定義が厳密でなくても許してね、という注釈であり明確なデータが少ないプロジェクトは初期的だらけで、ネタとして「超初期的」をつけたいなどと言われたりもします笑。
チャートの中身についてもコメントしておきましょう、1つ前に紹介したチャートよりはややこしくなっております。
左下の黄色でマークしている箇所を御覧ください。「各地域の製油所の稼働率の加重平均」と記載されています。注釈が4つある時点でジュニアの苦労が伺えます。
おそらくですが「にほんの原油処理能力の稼働率は欧州と並ん低位」というために様々な指標を使って比較し、もっともそれらしいグラフになるものを示したのではないでしょうか。1つのアウトプットを出すためにも裏にはボツチャートが5枚程あることもしばしばです。
かっこいいチャートですね、同時に必要な数字も多くなっていますのでマッキンゼーチャートで注目すべき右上の注釈も盛り上がってきました
「製品構成、価格、精製プロセスにつき仮定を設けた外部からの推計」
...頑張った笑!実際のプレゼンでここに突っ込むクライアントは基本的にいません。
このセクターは オイル&ガスと呼ばれ、製薬と並びデータリッチであることで知られる業界です。データが少ない業界においてはこれほど数字・データだらけのチャートは作ることは困難です。
こちらが如何にもマッキンゼーというチャート。縦と横に軸を切って構成されたチャートです。あまりビジュアライズに頭を使わないとこれだらけになってしまう点に注意です。
さて、マッキンゼーの資料は英語でプレゼンテーションはいくつか発見出来ます。最終成果物というものではないですが、こちら(USPSのビジネスモデル考察)なども参考になりますね。
https://about.usps.com/future-postal-service/mckinsey-usps-future-bus-model2.pdf
先程のBCGと比べると顕著ですが、比較的情報たっぷりの密なチャートを好むファームとコンセプト感ある情報密度薄めでパンチを強めるチャートを好むファームは分かれます。
どちらかと言えばマッキンゼーはコンセプチュアルなチャートを好みますね。
もちろん人の好みによるのでファーム全体としてこうだ、と断言は出来るものではありません。コンサルタントへの転職時はファームの雰囲気を面接の中で感じ取っていきましょう。
マッキンゼーへの転職志望者はこちらを御覧ください
デロイトトーマツコンサルティング
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000280.pdf
デロイトトーマツコンサルティング
平成26年度総合調査研究
「我が国のイノベーション創出環境整備に関する調査研究」
最終報告書
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2015fy/000084.pdf
こちらも189Pあるボリューム感たっぷりのレポートです。
しかし「入札結果に係る情報」によるとなんと5,940,000円(約600万円)で落札。
タダ働きに近い価格です。何かしらこの価格で受ける理由があったのでしょう。
最初のページは先程のBCGの例で見たようなアプローチ方法が記述されます。
「このプロジェクトではこんなことやりますよ」という定義付けですね。
ここでクライアントと握れない状態で始まると後々大量の修正要望が入るため本当に大変です。ここで「やるべきこと・やらなくてよいこと(プロジェクトのスコープ)」を定めるのはパートナーの最重要タスクの1つです。
「...にもかかわらず」これ連続したスライドでよく使いますね。
「〇〇の時代」「...にもかかわらず」という例です。
コンサルプレゼン資料の基本は1スライド1メッセージですので1枚に盛り込めるメッセージは限られています。その前提の中でストーリーに連続感を出したい場合のテクニックです。
こういった資料の中でボックスの中にあるテキストの分量が違い過ぎると粒度が揃っていないスライドとして評価が悪いです。これでもおおよそ3-4行に揃っていますね。
整理された印象を与えるにはこのような部分も重要です。
こちらの資料について詳細な分析を以下の記事で行っております
デロイトトーマツコンサルティングに転職する前に見たいプレゼン資料とコンサルの仕事基礎
コンサルのプレゼン資料を読んで転職前に学んでおこう
転職前にコンサルの資料を読むことによって様々な利点があります。
・仕事のイメージが出来る
・求められるクオリティの想像が出来る
・勉強として楽しい
・資料作成の参考になる
「コンサル プレゼン」「デロイトトーマツコンサルティング 経済産業省」などで調べると他にも多くの資料を見ることが出来ます。
コンサルタントへの転職を希望する場合、是非事前に学んでからコンサルの面接に挑戦してみて下さい。
面接対策についてはこちらをご参照下さい
資料の呼び名:スライド・パワポ・チャート
世間的にはスライドやパワポ資料という名称のほうがメジャーかもしれませんが、コンサルティング会社では基本的に「チャート(英語で図表という意味)」と呼びます。
面接時などでスライドなどと呼んでも悪くはありませんが、不自然に感じさせるので注意しておきましょう。
コンサルになりたい人へおすすめの転職方法
本メディアとしてコンサルになりたい方へおすすめする転職方法は4段階です。
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2.『BIZREACH(ビズリーチ)』で会うエージェントを選び質の高いエージェントと会う
自分がエージェントに求めるものがはっきりしてきたら、徐々に専門性の高いエージェントに会うのもよいでしょう。
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