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最強の競争力は「共感されるコンセプト」

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こんにちは、シャイニング丸の内です。

最近従来ビジネスを考える際に用いられていた「ロジカルシンキング」で理解に苦しむ場面が多くなりました。今回は結構真面目なテーマで従来のロジカルシンキングの克服と事業を考えるフレームワークの変化によってもたらされる大企業に対する危機、また若手への希望について考えてみようと思います。

 

20世紀的なビジネス思考とは何か

ビジネスの対象となる市場が存在し、市場規模および成長率が観測可能で競争環境を分析しポジショニングマップを作成、自社の強みを活かして参入し成長戦略を描き、収益性をIRR・NPVの観点から分析、妥当性があれば投資。これが従来は「論理的」であり、企業内においても説得力を持つ考え方でした。

不確実性の高いビジネスに投資をするベンチャーキャピタルでも投資対象となるビジネスを評価する際は基本的にこのようなフレームワークで考えています。

注意書き)VC(ベンチャーキャピタル)の内部で投資の意思決定をする際はDCF、マルチプルで「一応」20世紀的な評価を行いますが、実際には株式の放出割合と必要な資金で株価が決定され逆算的にDCFを使う場合が多いです。

しかし、この理論が通用するのは実は様々な前提がないと成立せず実際に機能するシーンは限定的だと感じ始めています。レガシーな石油、鉄道、単純な小売はこのフレームワークで十分機能すると思います。

対象地域の人口動態を始めとした入手可能な情報で性格に市場規模、成長率がわかりやすいからです。20世紀はそれでよかったのだと思います。大量生産、高い歩留まり、均質な品質を特徴としたマスプロダクションを考える上では適しているフレームワークでした。

前時代的フレームワークで理解出来ない世界

現在、時代が変化してきており、このようなフレームワークで捉えきれない商品やサービスが多く登場してきています。

例えば大きな反響があったサービス、CASHを考えてみましょう。この対象市場とはなんでしょうか。

cash.jp

即金入手市場?消費者金融市場?質屋市場?クレジットカード市場?

それではCASHのユーザーで従来の消費者金融を利用していた人の割合はどの程度でしょうか。質屋を日常的に使っていた人はどの程度でしょうか。

よくわからないですね、もちろん一部ユーザーは重複しているでしょうし、一部は異なるでしょう。それではこのサービスが対象として市場はどのようなものでしょうか。

潜在的なユーザーのセグメントはどのように分解されるのでしょうか。コンサルタントが作りがちな2 x 2 マトリクスで規定出来るものでしょうか。資金に対する緊急性と金額によって分析は出来るのでしょうが、そこから何が導出されるでしょうか。

どれも一部機能すると思いますが、このサービスの姿を捉えることは難しそうです。

ましてやそのようなフレームワークからCASH運営企業であるBANK創業者の光本氏は考えてこのサービスを始めたわけではないでしょう。

まだCASHのような理解不能型サービスがGDPの多くを締めているわけではないのですが、今後着実に増えていくことと考えられます。

このような従来型思考の克服として、デザイン思考を始めとした様々なフレームワークを作成する挑戦が現在なされていますが未だ整理され、企業内で説得力を持った考えが浸透するまでは時間がかかりそうです。

イノベーションとは何か

現代のビジネスにおける利益の源泉を「差異」だと考えるとこの差異が強烈なほど利益が生まれることになります。強烈な差異は時に「革新」と表現されます。 ビジネスを語る際に語られる「イノベーション」とは「競争力の源泉となる強烈な差異」と理解すればよいでしょう。

大企業は深刻な危機感を持ったほうがいい

さて、この不確定性の高いサービスが増えてきた世界で危機に立たされるのは20世紀型で運用されていた大企業です。サービスが20世紀型でありポートフォリオの入れ替えが必要ということであれば生存出来る企業となるのでしょうが、意思決定や組織の仕組み全てが20世紀型となって運用されている企業にとってはこの時代の変化は大きな脅威です。

例えばCASHのようなサービスは絶対にメガバンクから生まれないでしょう。自社のアセットとして大量の銀行口座を持っており様々なサービスが可能な立場にありますが、新たな挑戦をする環境にはメガバンクは最も不向きな組織と言えます。

たとえ若手の熱い思いを持った行員がCASHのようなサービスを提案したとしても

「リスクが大きい」「対象市場はどこか」「想定される収益性はいかほどか」等の質問がなされ実行に至ることは極めて困難です。

大企業もイノベーションに適していない自社の構造を認識し始め、外部への投資(イノベーションのアウトソース)を増やしているものの意思決定自体は20世紀的思考を克服出来ておらず、外部への投資を活用して成長まで出来ている大企業は極少数です。

このような状況は特に日本の大企業に顕著です。リスクに対する過剰な恐れ、外部連携への閉鎖、既存のビジネスに対するダメージへの過剰な反応・・・。

その結果、過去20年を振り返ると日系大企業はどのような成長が出来たでしょうか。

以下の画像はNECとNTTの株価の推移です。

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悲しいことに両者とも成長どころか、価値が減少しています。

過去実績から明らかな気もしますが、内部の体制を見ていてもこの恐竜のような企業が大きなテコ入れなくイノベーションを創出し続け成長し続ける組織に変化するとは考えづらいです。

20世紀型の思考の克服はこれらの企業にとっては乗り越えることが出来ないと考えています。今まではギリギリよかったですが、時代が大きく変化している中で組織としての思考方を帰ることが出来ないことは致命的な欠陥となり、私は予想よりも早くこれらの企業の業績悪化は進むのではないかと考えています。

持たざる者への希望

さて、大企業は危機にあると記載しましたが、持たざる者、若手やベンチャーにとってはどうでしょうか。私は希望の時代だと思っています。

新規事業を考える際に「既存の大企業が参入してきたらどうなるか」という議論は毎回ありますが、考える必要はありません。これに対する正しい回答は「大企業は理解出来ないから参入するのは恐らく弊社かもしくは他社が成功しその数字が公開されてから検討をする。その間に我々は決定的な優位性を構築する」です。先行優位がないビジネスモデルにはこの回答は使えませんが、その場合はビジネスモデル自体があまりよろしくないと考えるところです。

例えば高級キッチン家電で知られるバルミューダの業績を見てみましょう。当期純利益が8億円を超えています。驚異的。 

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しかし、この会社ベンチャーです。従来製造業で利益を上げるために必要と考えられていた巨大な工場や設備を持っているわけではありません。では何がこの利益の源泉なのでしょうか。

極端に語ればそこには「コンセプト」しかありません。想いが利益の源泉となっています。究極の炊飯器、究極のトースターなどの「コンセプト」があり、そのコンセプトを実現出来る技術を持つ工場と提携し独自性を高め販売するというビジネス。

「何故パナソニックは出来なかったか」という疑問に対しては「コンセプトに熱意を持って取り組む人がいなかった」という回答が最も正しいものと考えられます。

このバルミューダの事例を端的に解釈すると現代における最強の競争力は「強烈な差異を生むコンセプト」であると言えます。20世紀的には設備や資本を持っていない「持たざる者」は実は共感を呼ぶコンセプトがあれば途端に「最強の競争力を持っている者」となるのが現代のビジネスです。

これは何もBtoCビジネスにおいてのみ言えることではありません。私が最近携わっているビジネスで最初に話を持ちかけられたときは「ビジョンは綺麗だがターゲット市場が全くわからない」ビジネスがあり、20世紀的に評価すれば全くよろしくないビジネスでした。

しかし、始めて見ると次々と共感する法人が現れ、前身し始めました。このときにビジョン、コンセプトの力というのはBtoBビジネスにおいても通用するということを感じました。

皆様へのメッセージ

現代ビジネスにおける最強の競争力は20世紀的な「資本(工場、資金、労働力・・・」ではなく「共感されるコンセプトを追求し続ける熱意」です。20世紀的な思考を克服しましょう。ベンチャーであるHISが従来大企業であるJTBを追撃した手法は従来は競争力の源泉と思われていた「店舗」を持たずFAX、電話を使って遠隔で旅行を販売し資本を負債化した手法でした。

これからはそのような時代になると思います。20世紀的な工場、資金、労働力は競争力を生みだす資本ではなくコンセプトの迅速な実現をするためには障害となる負債となると思います。

大企業の方へ

本当にどうにかしてください。

熱意のある若手の就職先としては未だに日本ではベンチャーではなく大企業に偏ってます。しかしながら、明らかにこの大企業の仕組みは若手が持つ共感されるコンセプトの実現を阻んでいます。最強の競争力を自ら潰しています社会的に大きな損失ですし、個人としても幸せな生き方を支援していません。

内需に頼った旧世代のビジネスが成熟し収益性が圧迫されている状況下、何をするつもりですか。従来型の考えで日本以外における20世紀ビジネスを収益の柱という考えのもとでM&Aを行うのも結構でございますが、21世紀型の時代においては延命策でしかありません。組織の意思決定自体に大きな革新が必要と考えています。

それがなされないのであれば、組織自体解体されても実は日本のためにはかえってよいのではないかと思っています。「大企業」が熱意のある若手の所属先として消え、イノベーションの実現を出来る所属先に人が流れるということであれば社会的にはよいのではないでしょうか。

もちろんNTT等の大企業が必要性から消えはしないでしょうが、将来は地方公務員と同じようなポジションに「20世紀の大企業」はなると思います。熱意のある若手が希望して就職するような職場ではなくなる。

大企業に行こうとする学生・大企業にいる若手社会人へ

繰り返しですが、現代ビジネスにおける最強の競争力は「共感されるコンセプトを追求し続ける熱意」です。自分には何もないと思うかもしれませんが、考え方一つで自分は最強の競争力を持った存在に途端になり得ます。

この状況下で自分の持つ競争力を極大化させるために必要なことは「大企業」に所属することでしょうか。実はコンセプトの実現を後押しするどころか阻害する「大企業」への所属は個人として取るべきオプションなのでしょうか。

よく考えてみてもコンセプトを全く思いつかないのであれば社会保障として大企業の所属は合理的でしょう。しかし、やりたいことが「共感されるコンセプト」であり、自分にそれを追求し続ける熱意があると思えるなら大企業にいることは個人にとっても社会にとっても損失でしかありません。

大企業のアセット(データや顧客基盤等)が必要だと思えば大企業は所属先ではなく外部から「道具」の一つとして使えば良いのです。ありがたいことに?近年は大企業も社外のリソース活用に目を向け雑多なアクセレレータープログラムを実施し協業に対してオープンな姿勢に変化しています。大企業を道具として使える状況下では「共感されるコンセプト」を持つ個人にとって大企業に正社員として所属する意味は本当になくなってきているのです。

ベンチャーの人へ

イノベーションの担い手として最重要な位置にいます。既存の仕組みに囚われず「共感されるコンセプト」を追求し続けましょう。ときには立ち止まって自社の競争力の源泉となる「共感されるコンセプト」とはなにかを整理してもよいでしょう。20世紀的にベンチャーを捉えるのではなく21世紀的思考で捉え直してみましょう。

まとめ

5,000字ほど書いてしまいました。

・20世紀的ビジネス思考は通用しなくなる

・現代ビジネスにおける最強の競争力は「共感されるコンセプトを発想し追求し続ける熱意」

・20世紀型大企業の衰退は組織に定着した考えを変えない限り想像するよりも早く進むだろう

頑張ろうな