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ベンチャーは熱狂に踊ればいいと思う

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こんにちは、シャイニング丸の内です。

仕事柄様々な業界の展示会やイベントに行くのですがベンチャー界隈は特異な熱気を持っています。地味なシステム、インフラ業界からベンチャーのイベントに行くと、「CtoCが来る!ブロックチェーンが全てを変える!シェアリングエコノミーが未来を作る!お金2.0!グローバル!エストニア!イノベーーーーーションッッ!!ンアアア!!!」

宗教的な熱気を帯びています。この界隈だけを見て、ビジネスの世界にエントリーする若手はこの界隈は極めて特殊だと理解しておきましょう。

特に金融・コンサル関連の人々はこの熱気を冷ややかに見がちな傾向が強いですが、今回の記事は「この熱狂はいいんじゃない?」という見方で書いてみようと思います。

何が正しいかなんて知らねーなら熱狂で走るしかない

例えばAirbnbを考えてみましょう。世界的なシェアリング型サービスの成功事例ですね。しかし、頭のいい方がAirbnbが流行る前の時代にタイムスリップしたとしましょう。いくらでも批判出来る要素はあります。

・知らない人のベッドを借りるなんて安心感がなさすぎる、そもそもホテルというものの重要な競争決定要因は安心感・セキュリティじゃないのか

・事故が一度でも起こったら人々は二度と使わない

・毎日の清掃はどうするのか、そのオペレーションを乗り越えられるのか

今から考えてもいくらでも出せますね。

さて、この時にAirbnbを作るために必要なのはなんでしょうか。

私は冷静な分析ではなく熱狂だと思います。冷静に分析(悲観的な事業分析)していったら困難なポイントが大量に見つかるはずで、それに敢えて挑もうとするのはあまり賢い選択ではありません。むしろより確実なリターンを求めるのであれば「賢い」方ならいくらでも思いついてしまいます。

残念ながら「賢い」分析というのは世の中が一定の速度以下で遷移することを前提としています。例えば市場を見る際には市場規模とCAGR(年間平均成長率)を見ることは当然行う市場分析なのですがとあるサービスの登場により成長率が前年度の10倍になったらどうでしょうか?市場が一定程度静的である前提の賢い分析は意味を持つでしょうか?残念なことに全く役に立ちません。

賢い分析は鉄道の分析や鉄鉱石の需要予測のような遷移が遅いマーケットに対しては有効ですし、市場の概観を掴むまでは有効であると思います。

例えばAirbnbは世界のホテル市場の一部シェアを奪取、Uberはタクシー市場の一部、facebook/googleは広告市場の一部を奪取と考えれば、もともと巨大なマーケットを狙ったサービスであり、その切り口がよかったため首尾よく一定のシェアを獲得した(それでも他のレガシービジネスを集積したものよりも圧倒的に低い)と解釈出来ます。

しかし、賢い分析は市場概観を分析した後に手がつまり始めます。競争環境、ユーザーセグメント、セグメント別の消費性向・・・おやおや、いつまで「分析」しているのですか?

賢い分析を新規性が高く、流動性の高い市場に対していくら分析したところで出せる最高の結論とは「どうやら狙っているマーケットはデカイぽいし、今のプレイヤーはクソっぽいから勝てるんじゃね?」くらいしかない。

この後は既存プレイヤーのクソっぽいところを認識しながら熱狂を持って顧客を見ながら軌道修正を繰り返しながら突っ走るしかないというのが賢い分析の限界点のようである。

そしてこの稚拙な分析の元、投資家を揺るがしチームを前に進めるのはもはや熱狂しかないんですよ。根拠はないんだから。そこに求められるのは熱狂を起こせるビジョンと、カリスマ性を持ったリーダーなんです。冷静な分析でもレポートでもありません。

ここで結論「カリスマたれ!」ではややおそ松なのでおまけとして私が新規事業に携わるときに考えているフレームワークを簡単に解説します。

新規事業を考えるフレームワーク

①まず前提として対象マーケットが巨大であることは大きな成功には欠かせません。巨大マーケットのニッチから入ってニッチに拡張を続けるという方法は当然ありですが、自社の力がおよぶマーケットの限界点が20億円では売上げ1億いったら御の字という成功になるでしょう。

そして対象市場が成長していることです。この「対象市場」という考え方は注意深く考えましょう。例えばバイト求人という市場は成熟していましたがリブセンスは上場しましたね?ネット成果報酬型求人市場は成長していたからです。自社がいる市場はどこか注意深く考えましょう。

これを見誤ると全てを間違えます。

②次に既存ビジネスのクソな点、それによって引き起こされているペイン(痛み)を考えます。

AIでブロックチェーンでディープラーニングでウォオオオオン!系のスタートアップはここが足りませんね

実際の顧客は何なら金を払うのか、その解決がいくらで出来るのか。ここに注力します。実際に顧客はブロックチェーンだろうがプラスチックの鎖だろうがAIだろうが福原愛だろうが知ったことではありません。

私の課題がいくらで解決出来るのか

これしか知りません。ブロックチェーンうんたらはVCに話せばよいことでしょう(これは①での対象市場の広がりを語るためのものです)。

不動産のサービスを企画するなら管理会社、仲介会社、システム会社、顧客と良く話して下さい。特に社長だけではなく現場の担当者と深く話して下さい。企業が大規模化すると多くの場合、社長はノリはよいですが現場(意思決定者)のペインは理解していません。多くのサービスが不動産を始めとするレガシー市場から跳ね返されてしまうのはこの対話が十分でないように感じます。

ITだけを見て「ITではgoogle analyticsで可視化され代理店を通さずともgoogleに広告を出稿出来る!他の市場でもあらゆるデータが可視化され直接取り引き出来たらすごいはずだ!」こういう考えは失敗の始まりです。

注意点追加ですが可視化、直取引、こんなもの幼稚園生でも思いつきます。幼稚園生でも思いつくような構造が実現されていないならそれなりの理由があります。決して「自分は頭がいいから他人が気づいていないポイントに気づいてしまった」と思わないことです。自分が頭がいいと思っている時点でおそらくあなたは馬鹿です。

そうなっていないものにはそうなっていない状態で安定しており、そこには理由があります。

③どう解決するかは実用的か

あなたは見てしまった!そう!FAXを!ゴリラがガラケーを取り出し「あれFAXしておいて~!FAXみましたか~!?」と叫ぶ姿を!

あなたは思った「おお!これはデータをクラウド化し、ゴリラにスマホを持たせ、CTOが作ったブリリアントなアプリを使わせれば・・・イノベーーーーーションッンン!石原さとみッ!!!!!ンアッ!!!フンッ!!」

いや、そうはいかないですよ。顧客、現場をよく見ましょうて言ったよね?この体験を実現するためには飛ばなければいけないステップが大きい。

・データの整備:今紙です、裏側でオバちゃんがキングジムファイルにファイリングしています。ちなみに管理会社によってファイルフォーマットはバラバラなためフォーマットの統一から始める必要があります

・データを外部からアクセスするようにする:サーバー?鯖?ありませんよ。

・スマホ:会社から支給するためにガラケーを使っている仲介歴30年の社長を説得しましょう

・専用アプリ:ゴリラのリテラシーで使えますか?ゴリラは短期離職なので度々ユーザー教育が必要です

このステップが複雑であればあるほど、サービス成立のために必要な前提が多ければ多いほど事業は失敗に近づきます。

やろうと思ったらサクっと出来る

この視点が欠けているサービスが多いと思います。ここは市場規模と並び超!超!超重視しましょう。

部分的に新規事業マニュアル書いたけど、ここで止める

新規事業マニュアルを途中まで書いてしまいましたが、全部書いたら膨大な量になるのでそれはいつか十分な実績を積んで実名でやってみようかと思います

ひとまずまとめると

・流動性が高い市場で求められるのは賢い分析ではなく、熱狂

・対象市場は広いところを選べ、対象市場がそもそも狭いと「詰まる」

・大きな対象市場から自分のニッチを選び攻略しながら次に進もう

・顧客は技術には興味がない、技術に興味があるのは投資家、エンジニア、新規事業担当部署、顧客がいつも最重要

・「サクッと出来る」を重視したソリューションを設計する

それではグッドラック!